2019年12月10日(火) 20:37 櫻谷翔吾

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曽根さん

お疲れ様です。

さて、1通目の往復書簡をこれから始めようというところですが、手紙でもブログでも企画書でも「書き始め」は「話し始め」よりどう始めていいものか悩み、そういう意味で毎回腰が重くなります。

書き言葉は、自分が喋ろうとしていること(話し言葉)を文字化しているというイメージがなんとなくありますが、それは違うのであろうということを毎回この腰の重さを通して感じています。

曽根さんはなにか、「書き言葉」と「話し言葉」に対する感覚の違いってありますか?

手紙って、相手からのレスポンスを期待して書くっていう部分があるなと思い出し、まずは曽根さんに質問を送る体で、個人的に難しいと感じている「書き始め」に代えさせていただきます。

 

本題に移って、往きのメールでは、

「作品のテクスチャー」を考えていくために、まずはこれまでに自分がいいなと思った上演のスタイルについて共有させていただきますね。

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(順不同)

■大道寺梨乃さんの、

「朝と小さな夜たち」

@blanclass

→上演が始まる前、スタジオの隣にあるリビングのようなスペースで集まった観客がいくつか大皿の料理(前菜)をシェアして開演までの時間を待っていました。そしてその時間を経て、皆でゾロゾロと上演スペースのスタジオへと移動し作品を鑑賞(シェア?)するという流れがありました。ご飯を食べている間、知らない人同士チグハグと他の人を曖昧に認識する時間が個人的にあったのを覚えてます。

また、ゆるーく、その場所に体が馴染んでいくのを確認できる時間でもあったのですが、その感覚を持った後で、上演を見れた事はとても大事な体験でした。

また、上演後にはアフタートークもあったのですが、「前菜の時間」→「作品」→「アフタートーク」この一連の流れが、大きな段差を超えずにフラットに連なっているように感じ、「上演」の持つ強さではなく、その場に居ることで得られる体験が記憶・印象に残ったのが個人的に素敵だなと思ったポイントでした。

 

■岸井大輔さんの、

「始末をかくレプレゼンテーションズ1「文(かきことば)」ほか」

@場所は多分勝手に公開しちゃいけないのかな。伏せておきます。

→2年ほど前のことなのですが、これは体としては稽古場見学になっていたかと思います。マンションの一室で、隣り合っている部屋とベランダを移動しながら、複数の(完成に近づいているように感じた)作品の、稽古?上演?をみていました。そこで行われている内容の他に、どういう環境でこの取り組みが発生しているのかというのに強く関心を抱いたのを覚えています。

狭いスペースで、観に来ている他の人の存在を結構強く感じた記憶があり、他者の温度を感じ(たように思った)たのが印象的でした。肘掛けで区画された席に座るのではない状態で感じる、人との距離感は、もしかしたら鑑賞中の体験に大きく影響しているのかもしれません。

余談ですが、その日の帰り、会場近くの居酒屋で一人モツ煮とポテトサラダでビールを飲み、横のテレビでは藤井聡太さんが快進撃を続けていたニュースが流れていたのを覚えています。

■青谷明日香さんの、

「東京独奏会2019」

@CHUBBY

→僕が大好きなシンガーソングライターの方のワンマン弾き語りライブでした。

(*もしよかったら聴いてみてください。「帰っておいで#2」とか素敵です!)

美味しいご飯とお酒が売られていて、それを食べ、飲みながらライブを鑑賞している人たちがいて空間として幸せな場所でした。ある空間に、幸せだなと感じられる時間が流れていることは大事なことだと思います。

ここでも、席はソファーだったり長椅子だったり、明確な区画は薄く、各々が他の人を意識しながら自分のスペースを所有していました。

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  ここで挙げた3つに共通して僕が寄せている関心は、発表(上演)された作品が、上演が持つ強さからは離れたところで成立しているように見えたことではないかと思います。言い方を変えるとそれは、鑑賞者にとって上演の時間が、作品に“出会う”時間というよりも、作品を“通過”していくための時間として存在していたということでしょうか。これは僕の主観ですが。

生活と作品が地続きになっている状態というのをいつも素敵に感じます。

また、もう一点共通していたなと思うのは、どれも観劇・鑑賞するという前提があり、特別なにか参加を促されるようなことはありません。しかし上演を通過してみると、一方向の矢印が強い上演ではなく、時間空間を相互に共有していた感覚に気付かされます。それが個人の体験として体や記憶に残るという感覚が強いなと思いました。

その感覚は、目の前で上演されている内容だけではなく、その作品に触れる前後の時間、及びそれが上演されている場所(空気感・時間)に大きな影響を受けているのだと思います。

1回目、乱雑になりましたが、まず自分が良いなと思う上演の例をいくつか紹介させていただきました。

曽根さんはどんな質感の作品や空間に魅力を感じているのか、曽根さんがこれまでに触れて関心を抱いた作品についてなどお聞きできたら嬉しいです。

お返事お待ちしております。

櫻谷